親の遺産から葬儀費用を出す場合もトラブルの種が
ゴタゴタの原因になりやすいのが「誰が費用を出すか」についてだ。浄土宗僧侶でジャーナリストの鵜飼秀徳氏が言う。
「費用負担者を事前に決めている家族は稀です。一般的には施主が費用を負担する代わりに香典を受け取るケースが多いが、暗黙の了解だと思い込んでいたら、葬儀後に施主から兄弟に『葬儀代は割り勘にしよう』と持ちかけられたという事例もある。突然の出費を求められると感情的になり、兄弟仲が険悪になってしまう」
親の遺産から費用を捻出する場合、「兄弟格差」がネックとなる。現役時代の貯えや資産運用で余裕のある暮らしをするB氏は、昨年90代の母親を亡くした。
せっかくの大往生だからと遺産で豪華な葬式を開いたが、年金収入のみでカツカツの生活を続ける弟から、「勝手に無駄遣いするな」と猛抗議された。
「弟は、葬儀に費用をかけることで相続財産が目減りすることに怒ったようです。とはいえ、母の葬儀の場でカネの話をするなんて不謹慎極まりない。案の定、弟とは遺産分割協議で揉めています」(B氏)
事前に予算を組んでいても落とし穴がある。
「一部の葬儀業者は火葬料と飲食代、お坊さんへのお布施代を外して見積もりを示すことがある。火葬料とお布施代は当日払いのため、葬儀直後に追加数十万円の費用を請求された施主が仰天し、兄弟などに一部の肩代わりを強要してトラブルになるケースもありました」(都内の葬儀業者)
費用を抑えるつもりで「家族葬」を選んだはずが、裏目に出ることもある。前出・鵜飼氏が言う。
「少人数の家族葬は格安と考えられがちですが、大規模な一般葬をすれば葬式費用を賄えるほどの香典収入があります。結果として、家族葬のほうが高くつくケースも多い」
葬式が原因で家族が分裂していては、故人が浮かばれない。
※週刊ポスト2019年1月18・25日号