親が亡くなると様々な手続きが待っているが、中でも大きな問題となるのがお墓についての扱いだ。
「俺は檀家にならない!」──こう宣言したのは京都在住のA氏(62)。長男で、親が死んだのを機に祭祀継承者として本家の墓を管理するはずだったが、「老後の生活費が心配なので、檀家料の納入は今年でやめる」と寺に連絡を入れた。
A氏から相談を受けた浄土宗僧侶でジャーナリストの鵜飼秀徳氏が言う。
「自分だけが檀家料を負担することが不満だったA氏は、兄弟との話し合いも決裂して激高してしまった。住職が『両親や御先祖が入っているのにどうするの?』と諭しても、聞く耳を持ちませんでした」
だがA氏の行動は、費用の面では、明らかに不利になるという。
「檀家の年間墓地管理料は約1万円で、祭祀継承者は亡くなればその墓に入れます。Aさんの場合、弟のいずれかに祭祀継承者を引き継いでもらったり檀家料を分担してもらえれば、Aさん自身も墓に入ることができた。
ところが、檀家をやめて新たな墓を作れば何百万円もかかります。永代供養墓に移すとしても費用は30万~40万円。檀家を続けたほうが圧倒的にコストがかからないのに、最近は『檀家は負担ばかりで時代遅れだ』という情報を鵜飲みにする人が多い」(鵜飼氏)