不動産市場が活況を呈している。2013年9月の首都圏の新築マンション発売戸数は前年同月比77%増と大きな伸びを見せた。契約率も好不調の分かれ目となる70%を超え、3か月連続で80%を上回っている。2020年の東京五輪をにらみ、今後の首都圏不動産はどう動いていくのか、みずほ証券金融市場調査部チーフ不動産アナリスト、石澤卓志氏が予測する。
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いわゆる「アベノミクス」効果により2013年2月から首都圏の新築マンションの供給は増えていたものの、なかなか売れない物件もあったが、ここにきて売れ残りがほとんどなくなっており、いまははっきり「好調」といえる状況が続いている。
これは、金利の先高観や不動産価格がいよいよ底を打ってきたという安心感に加え、2014年4月の消費税増税前の駆け込み契約という要因が大きい。
都心の地価が上昇する最大の追い風は、いうまでもなく、20年に開催される東京五輪である。五輪開催に向けて東京湾岸を中心に会場や選手村の整備はもちろん、そのための交通アクセス(高速道路や一般道、電車、バスなど)などインフラ整備が目白押しとなる。
ただでさえ東京のインフラは老朽化が指摘されてきた。湾岸部の開発を巡ってもやっかいな権利調整があるなど、都市基盤の整備が十分とはいえない点もあった。だが、東京五輪という目標ができたことで、多少無理をきかせてでも大きく前進するのは間違いないだろう。
そして、五輪によって東京の不動産価格にも大きな変化がもたらされるかもしれない。
東京を高級住宅街を数多く抱える西側の「山手エリア」と東側の「下町エリア」に分け、マンションの販売単価(1平方メートル当たり)を比較してみると、これまでは西と東では大きな価格差があり、「西高東低」と呼ばれてきた。
豊洲(江東区)に大型マンションが相次ぎ、東京スカイツリー効果などもあって「下町エリア」の見直しが進んできたが、それでも2013年上半期時点で、その差は33.5%の開きがある。
しかし、今後は五輪開催に向けて東京湾岸を中心とした下町エリアのインフラ整備が充実することから、「東」の方がより値上がりすることが予想される。
具体的なイメージとしては、下町エリアの1平方当たりの単価は現在の67万円から2020年には90万円と約34%増の上昇が見込める。これに対し、山手エリアは100.8万円から120万円と約19%増。伸び率で見ると「東」が高くなり、その価格差は25%へと縮小する見通しである。
振り返れば、東京湾岸部は震災直後に「液状化リスク」が指摘され、多摩地域など内陸部に目が向くようになり、湾岸部の不動産価格も落ち込みが目立った。だが、改めて検証してみると、液状化の被害があったのは千葉・浦安のみで、豊洲や晴海、有明といったエリアではほとんど被害が発生していないことが明らかになっている。「安心・安全」に五輪開催という強力な後押しもあって、「東西格差」の縮小は今後ますます進むのは間違いないだろう。
※マネーポスト2014年新春号