いま、世界的に「知識社会化」が進行している。GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)などのグローバルIT企業では、世界中から優秀な人材が高額な報酬で集められている。知能の高い者が経済的にも優位になり、格差社会が進行する。「労働市場は高収入と定収入の職種に二極化し、『バーベル経済』に変わっていく」──作家の橘玲氏はそう指摘している。そして橘氏が、もうひとつ格差拡大に大きな影響をもたらすと指摘するのが、「ゲノム編集」だ。新刊『もっと言ってはいけない』が話題の橘氏が解説する。
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中国で受精卵のゲノム(遺伝子)を編集した双子が誕生したというニュースが話題になったが、これからの社会を大きく変えていくもうひとつのテクノロジーがゲノミクス(ゲノム学)だ。ワープロで文章を編集するように生き物のゲノムを編集できるツール(CRISPR-Cas9)が開発され、植物だけでなくブタやウシなど多くの家畜が「機能強化」されている。
当然のことながら、こうした技術は人間にも適用可能で、現時点でも、生まれてくる子供の髪の色(金髪)や目の色(碧眼)を「編集」することは可能だ。知能や性格はこれよりずっと複雑だが、いずれは最適な遺伝子の配列が解明されることになるだろう。
こうした技術は当然、先進国ではきびしく規制されるだろうが、一部の国(たとえば中国)で実施されているとしたら、富裕層は数億円を払って自分の子どもの受精卵を「編集」しようと思わないだろうか?