このようにして、身体的・精神的・知的に優れた遺伝子をもつ上流階級と、ゲノム編集されていない下層階級のあいだで格差が拡大していく。これは「優生学」以外のなにものでもないが、それは独裁者や国家権力ではなく、個人の自由意思によって進められていくのだ。
こうして経済格差は「遺伝子の格差」になり、格差社会は完成する。
私たちはいま、こうした「未来」のとば口に立っている。
【PROFILE】たちばな・あきら/1959年生まれ。2002年国際金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。新刊『もっと言ってはいけない』(新潮新書)ほか、『朝日ぎらい』(朝日新書)、『80’s エイティーズ』(太田出版)など著書多数。
※SAPIO2019年1・2月号