2025年の大阪万博開催が決まり、関西経済界は期待感に沸いている。五輪から万博という流れは、1964年の東京五輪から1970年の大阪万博への流れを想起させるが、大前研一氏の見方は否定的だ。新刊『50代からの稼ぐ力』が話題の大前氏が解説する。
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大阪万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに2025年5月3日から11月3日まで、大阪湾の人工島・夢洲で開催される。万博誘致委員会のHPによると、想定来場者数は約2800万人、経済波及効果(試算値)は約2兆円だという。
会場となる夢洲(ゆめしま)は、大阪市が1977年から約3000億円を投じて造成してきたが、バブル経済の崩壊や2008年夏季五輪の招致失敗などで整備計画が幾度も頓挫して閑古鳥が鳴き、「負の遺産」と呼ばれてきた。このため大阪府と大阪市が万博とカジノを含む統合型リゾート(IR)を一体的に整備することで失策を挽回しようとしているのだ。
しかし、万博にプラスの効果はないだろう。イベントで景気を良くしようという発想は日本の役人や政治家の“癖”だが、もはや一過性のイベント経済で都市や地域が繁栄する時代ではないからだ。
21世紀の「繁栄の方程式」は、世界から人、企業、投資、情報が毎日集まってくるメガシティをつくることだ。ところが、大阪はそうなっていない。だから、都市戦略研究所(森記念財団)の2018年「都市総合力ランキング」で東京は3位だが、大阪は28位でしかない。
イギリスのオックスフォード・エコノミクスが予想した2035年の都市別GDPランキングでも、東京はニューヨークに次いで2位のままだが、大阪は2016年の7位から17位に急落するとされている。かたやハイテクに舵を切った中国の深センは、改革開放政策で経済特区に選ばれた40年前は人口30万人のひなびた漁村にすぎなかったが、今や人口1400万人のメガシティに発展し、トップ10入りを果たしている。