通常65才から受給できる年金。受給を60才からに繰り上げると30%減額され、逆に70才まで繰り下げると42%増額されるという制度があり、何才から受給開始するかで頭を悩ます人は多い。繰り下げた方が圧倒的にお得である半面、受給開始できる年齢が遅いため、年金をほとんど受け取れないまま寿命を迎えることになる可能性もあるからだ。
だが、一度「繰り下げ」を選択した後でも、その選択を「なかったこと」にできることはあまり知られていない。受給前に他界しても、受け取っていたはずの年金を請求すれば、国民年金と厚生年金を合わせて、「未支給年金」として一括で受け取ることができるのだ。
「未支給年金」は他にもある。年金は後払いのシステムであるため、2か月分が偶数月の15日にまとめて支給される。たとえば、2月分と3月分の年金は、4月15日に支払われるという具合だ。故人が亡くなった日(毎月1日を除く)のその月の分まで受給できるため、仮に4月2日に亡くなったとしても、4月分が満額支給される。
「受け取れる人は、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、三等親以内の親族と順番が定められており、自分より先の順位者がいる場合は請求できません。故人の死後5年以内に年金機構に『未支給年金請求書』として請求します。何もしなければもらえないままなので、必ず申請しましょう」(社会保険労務士の井戸美枝さん)
他にも、忘れてはいけないのが「遺族年金」だ。国民・厚生年金の被保険者が亡くなった際、条件を満たした遺族が受け取れる年金で、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」がある。