厚労省の毎月勤労統計の調査不正は、第2の「消えた年金」問題と呼ばれる──。統計調査の内容やデータを変えて平均賃金を低く見せかけた結果、国民が受け取る失業給付や労災の遺族・障害年金、介護休業給付などが数百億円も減らされ、追加支給が必要になった。被害者は延べ2000万人にのぼる。
12年前、2007年の「消えた年金」問題では、厚労省と旧社会保険庁のずさんな年金行政で5000万件を超える年金保険料の納付記録が消され、年金が支払われないままになっていることが発覚した。それに怒った国民が年金事務所に殺到し、第一次安倍政権を揺るがす事態となった。
これまでに約3000万件が判明、総額1兆6000億円の未払い年金が追加支給されたが、未だ2000万件の記録が特定されていない。なぜ、厚労省で巨額の未払いが繰り返されるのか。実は、「第1」も「第2」も問題の病巣は同じだ。
厚労省は国民生活に直結する多くの統計調査を実施し、役人がつくりあげた複雑な計算式の数字を少し変えるだけで年金や医療費、失業保険などの社会保障給付、いわば国民に払う“命のカネ”をいかようにも増減できる権限を持つ。そうした数字の操作こそが、この役所の力の源泉であり、それが「消えた年金」や数々のデータ改竄など数々の不祥事を生んできた。