2004年の年金改正で導入されたが、物価が下がっている年は年金額を減らさずに据え置かれてきた。それを厚労省は「もらいすぎ年金」(特例水準)と呼んで批判し、2012年の年金改正で「特例水準の解消」を名目に年金額を2.5%引き下げた。
さらに2016年の年金改正では、物価下落で発動できなかった年の「スライド調整率」を毎年持ち越し、物価が上昇したときにまとめて精算させて国民の年金をいっぺんに減額(目減り)させるキャリーオーバー制度を導入した。今年から実施が見込まれている。
前出の星野氏は、こうした度重なる制度変更の結果、2018年度の年金受給世帯の実質年金給付は2012年度より6%下がる見込みと試算している。
「このうち3%分は年金特例水準の解消による減額と15年のマクロ経済スライドの発動によって年金の実質額が目減りしたものですが、残りの3%分は年金改定の複雑な計算式によるものです。消費税増税による物価上昇でも年金額が上がらない仕組みがあり、その結果、年金額が実質目減りしていると考えられます」(星野氏)
とはいえ、これまでは賃金上昇率がマイナスになっても年金の改定率はゼロで据え置かれてきたため、年金の支給額が額面で下がることはなかった。だが、2021年からは賃金や物価が下がれば、年金額そのものが引き下げられるようになる。
※週刊ポスト2019年2月1日号