新元号を迎える日本が「失われた30年」を取り戻す唯一の方法は、教育の抜本的な改革だ。本連載で繰り返し述べてきたように、これからは21世紀の「答えがない時代」に答えを見つけてリーダーシップをふるうことができ、英語などのコミュニケーション能力もあって世界のどこでも活躍できる人材を育成しなければならないのだ。
そのためには、スポーツや音楽やバレエの世界と同じような世界標準を「見える化」した教育が必要となる。それは現在の文科省教育の対極にあるものだが、このまま日本が時代遅れの教育を続けていたら、21世紀の日本人は“劣等世界市民”になってしまう。
その一方で、21世紀の競争と繁栄の単位となるメガリージョンへの対応を急がねばならない。具体的には、まず衆院選の比例代表ブロックと同じような人口1000万人規模の広域単位で道州制を導入し、各道州に自治権を与える。そして、中央から分与された範囲の権限に基づいた矮小な地方創生ではなく、各道州が自分たちで発展の道筋を立て、そのために必要な人材をつくる教育ができるようにすべきなのだ。なぜなら、たとえばロシアとの関係が重要な北海道と、韓国や中国との関係が重要な九州では、学ぶべき言語や歴史や地理は異なるからである。
こうした私の提言を理想論だと言う向きもあるだろう。だが、明治以来の中央集権のまま衰退していった平成の30年を考える時、メガリージョンの競争に勝てる人材育成の自由度と、世界から人、投資、企業、情報を呼び込む力を道州単位で持たせるようにしない限り、日本は次の30年も制度疲労した中央政府の下で衰退し続け、世界史の表舞台から静かに消えていくことになるだろう。
※週刊ポスト2019年2月1日号