「2017年の6月ごろ、友人から『対人要素やランキング報酬がなくて気楽にできる』という謳い文句で紹介されたゲームにドハマりしました。重厚なストーリーで登場するキャラが魅力的で、何としてもガチャで手に入れて自分のスマホで愛でたい願望にかられました」
こうなったらもう止まらない。どんどん課金額が増えていく。
「最初は、キャラが出ても出なくても月2万円くらいに抑えていました。でも次第にエスカレートしていき、12万円でキャラが出なくても、次の1万で出ると信じて13万円で出たときは感動に震えました。1体で満足できなくて、コンプリートを目指して20万円以上つぎ込むことも……」
ゲームプレイよりもガチャを引くことが目的に
年収450万円で、手取りは月収約30万円だというAさん。ごく一般的な会社員だけに、無理はあった。課金で少なからず罪悪感を抱いていたというが、正当化してうまく自分をごまかし平静を保っていたという。
「Twitterで『キャラ名+爆死』で検索するんです。例えば、自分が3万円で1体出たなら、同額で引けていない人もいる。そうやって“自分は運がいい方だ”と思い込むようにしていました。それから、課金で1万円使ったら飲み会に2、3回行ったと思えばいい、5万円なら今月は残業代が出るから実質無料、10万円以上なら海外旅行に行ったとか、PCが壊れたから買い替えたのと同じ……と思い込むようにしていました」
彼の金銭感覚を狂わせたのは、Twitterのゲーム専用アカウントの存在も大きいという。
「フォロワーは、みんな当たり前に月に数万~数十万単位で課金しています。通常の金銭感覚ではどう考えてもおかしい。でも、それが日常化して、何も疑問に思わなくなりました。やがて課金なら迷いなく1万円出せるのに、家電や服などのモノにはお金を出せなくなりました。だって、50連くらい回せるからです。すべてが課金優先で課金換算してしまう。もはや、課金することが人生の喜びといっても過言ではなかったのかもしれません。Twitterに『単発で引けた!大勝利!』『〇万でも出ない……止まるんじゃねぇぞ……』『課金は家賃までにしとけよ』などと投稿するのも楽しくて、やめられませんでした」
しかし、Aさんは次第にガチャで引いたキャラの育成が疎かになってきた。ゲームプレイよりも、ガチャを引くこと自体に重きが置かれるようになってしまったのだ。こうなるともう末期症状だ。そんなAさんを救ったのは、皮肉にもこのゲームを紹介した友人の言葉だった。