昨年来、激しい対立を繰り返していたアメリカの中国の貿易摩擦が落ち着きを取り戻しつつある。そうした点が、アメリカをはじめとする世界の株価や為替に、どのような影響を与えるのか。カリスマ主婦トレーダーとして知られる池辺雪子さんが、対中関係を軸に今後のアメリカ経済を分析し、株価の動向について解説する。
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トランプ政権発足後、火花を散らしていた中国とアメリカの貿易摩擦がここにきて落ち着きをみせてきたように思います。中国側がアメリカに対して、大幅に譲歩する姿勢を見せはじめたからです。
アメリカにとって中国は最大の貿易赤字国であり、2017年にはアメリカの貿易赤字のうち約半分を占めています。そのため、アメリカは中国からの輸入に対して、関税をかけて貿易赤字を解消しようとしてきました。一方の中国も対抗措置として、アメリカからの輸入に対して関税をかけるという構図が続いてきました。
しかし、昨年末から中国側の態度が軟化しはじめており、中国側は今後、アメリカの製品を大きく受け入れ、輸入額を増やすと発表しています。そして、アメリカとの間にある貿易不均衡を解消し、両国の間に貿易赤字が生まれないような仕組みを作っていく姿勢を見せています。
中国側がアメリカに譲歩するようになった背景として、中国国内の経済成長の鈍化や国内需要の低下などを挙げる人もいます。もちろん、そういった要因もあるでしょうが、アメリカが中国に対して貿易赤字ということは、中国にとってアメリカは“お得意様”ということになります。そうした意味で、本格的に貿易摩擦が起これば、不利になるのは中国側です。
特に、アメリカが関税の対象にしているのは、中国が最大の生産国である鉄鋼やアルミニウムです。そして、鋼鉄やアルミニウムを取り巻く環境は、中国の過剰生産と不当廉売によって世界各国の鉄鋼業界が悲鳴をあげている状態だと言えるでしょう。