「昔は金利が高かったため、まとまったお金を定期で預ける人が多くいました。そのまま満期になって放置する人もいますが、権利が消滅すれば、せっかく増やしたお金も水の泡。生前から郵便貯金の口座がないか、家族で話題にしておきましょう」(保手浜さん)
権利が消滅する口座は、約1兆6699億円が払い戻されずに残っており、2015年には150億円、2016年には68億円もの貯金が権利消滅しているというから、注意が必要だ。
もし、満期からまだ20年経っていない定期貯金通帳が出てきたら、すぐに契約者本人と一緒にゆうちょ銀行窓口で手続きしよう。
だが、本人の死後に発見した場合は注意が必要。うっかり契約者が死亡したことを窓口で話せば、即座に口座が凍結されてしまう。相続に詳しい税理士の岡野雄志さんが話す。
「凍結を解除するには、相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明だけでなく、故人の出生から死亡するまでの戸籍謄本が必要です。生前、故人にゆかりのあるすべての役所に問い合わせなければならないため、手続きは非常に大変です」
幸い、自分から届け出なければ金融機関が口座を凍結する可能性は低い。相続人全員の同意があれば故人の口座から引き出しても罪に問われることはない。窓口ではなく、キャッシュカードなどで引き出せばいい。
ゆうちょ銀行以外の金融機関でも、2018年1月に「休眠預金等活用法」が施行され、2019年1月からは10年以上取引がない預金は「休眠口座」に移管され、地域活性化支援などに使われるようになった。
「移管されるからといって、権利が消滅するわけではありません。基本的に10年を過ぎても、本人確認証や住民票、戸籍謄本などを揃えて銀行窓口で手続きすれば、口座を復活させてお金も引き出せます」(保手浜さん)