どんどん長くなる老後を不自由なく過ごしていくために、家計の柱となるのが「年金」だ。ところが、どれだけ真面目に保険料を納めていても、ちょっとした見逃しや不注意で、本来、もらえるはずの年金を受け取れなくなる。その落とし穴にはまっている人は思いのほか多い。
年金のもらい損ねは、「老後破産」の悲劇に直結する。虎の子の老後資金は、自分の手で守らなければならない。
〈はたらけど はたらけど猶わが生活楽にならざり ぢつと手を見る〉
石川啄木はそう詠んだが、現代の働く高齢者は「手」ではなく「年金振込通知書」をじっと見る。そうすれば働けどなお暮らしがなかなか楽にならない理由がわかる。現在の年金制度の下では、働けば働くほど、「在職老齢年金」がごっそり削られていくからだ。
63歳のAさん(1955年生まれ)はまさにそんなむなしい思いを噛みしめている。図にその収入の内訳を示した。
定年退職後、雇用延長で会社に残ってフルタイムでバリバリ働き、月給36万円を稼いでいる。現役時代の月給40万円より減ったが、年金の受給開始を目前に控え、収入に不満は感じていなかった。