NYダウ指数が戻り歩調となっている。2018年12月26日の場中で21713ドルの安値を記録したNYダウ指数だが、2月4日の終値は25239ドルまで上昇、この間の上昇率は16%に達している。過去最高値は2018年10月3日の場中で記録した26952ドルなので、下落分の3分の2を取り戻したことになる。
急落の主な要因がFRB(連邦準備制度理事会)の金融政策、米中貿易戦争の激化であるなら、急回復の要因はFRBの金融政策の変更であり、米中貿易戦争の見通し改善である。市場では、これらに加え、企業業績の鈍化も価格変動要因の一つとして挙げられるが、いまのところこの点については大きく影響するほどではないだろう。逆に言えば、金融政策の変更、米中貿易戦争の見通し改善がカバーしていると言える。
FRBのパウエル議長は1月4日の講演で、金融政策を柔軟に見直すと発言、利上げの一時停止を示唆した。1月30日のFOMC(連邦公開市場委員会)では追加利上げが見送られると同時に、これまでは年2回の利上げを見込んでいたが、それを棚上げし、さらに、資産圧縮計画の見直しも示唆された。
FRBが物価、雇用など景気見通しに関して見方を変えたことが見直しの直接的な要因かもしれないが、それ以上にトランプ大統領の強い圧力が影響したとみられる。
米中貿易戦争に関して言えば、トランプ大統領は1月8日、貿易協議について順調に進んでいるとツイッターを通じて発言、ムニューシン財務長官は1月17日、対中関税の撤廃を提案したと発表している。1月30、31日に行われた米中閣僚会議では、中国側は重要な進展があったと報じている。トランプ大統領は2月2日、鴻海精密工業の郭台銘会長に直接電話し、一時凍結していたウィスコンシン州での液晶パネル工場建設の再開を促したほか、米中貿易協議は順調に進んでおり合意に達するだろうと発言したという。
貿易協議の決着は両国首脳による会議に持ち越されているとはいえ、次の追加関税引き上げ措置の期限となる3月1日までに協議がまとまる可能性が高まっている。
トランプ大統領の最大の目標は次の大統領選挙で再選を果たすことである。株価の上昇が大統領としての大きな成果の一つとして喧伝してきたこともあり、株価の下落を放置するわけにはいかない。それは即、落選に繋がってしまうリスクが高い。トランプ大統領の強力な指導力がアメリカの株価を支えているといった見方ができよう。