理不尽すぎるペナルティ
それというのも、扶養親族等申告書の提出を怠ると“ペナルティ”で公的年金等控除が大幅に減らされ、年金から天引きされる税金がハネ上がる仕組みがあるからだ。
図は、夫(65歳)の年金が220万円、妻(65歳)の年金78万円の世帯で、正確な扶養親族等申告書を提出したケースと、未提出のケースの所得税額を比較したものだ。“年金博士”こと社会保険労務士の北村庄吾氏の試算である。
申告書が正確に記入されていれば、夫の年金収入から「公的年金等控除」(120万円)や「配偶者控除」(38万円)、社会保険料などが控除され、残った課税所得5万円に税率約5%が課税される。所得税額は年間2552円となり、毎月の収入から税金はほとんど天引きされない。
それが申告書を未提出だとどうなるか。実は、そのデメリットは38万円の配偶者控除が受けられなくなるということに留まらない。所得税額は15万3915円と約60倍も徴収されるのだ。月額に直すと、実に1万円以上もの“所得税増税”になる。
なぜ、配偶者控除の申告を忘れただけで税金が60倍になるのか。それはペナルティとして公的年金等控除が半分以下に減らされ、そのうえ所得税率が約10%と2倍になるからだ。まさしく、年金制度に仕掛けられた“罠”である。
こんな理不尽なペナルティを課されたら、当然、年金の手取りは大きく減る。図のモデルケースでいえば2月の年金振込額(2か月分)は昨年12月支給分より一気に2万5000円ほど目減りすることになる。
昨年2月の騒動時には、年金機の下請けのデータ入力ミスも発覚。引かれた税額が正しいかは、自分でチェックする必要があるのだ。