相続コーディネーターの曽根恵子さんは、樹木さんが遺言書を作っていた可能性を指摘する。
「通常の相続では、亡くなった後10か月の申告期間中に不動産などの財産評価を行って相続税を算出し、遺産分割協議を行います。樹木さんの場合は早いうちに遺産相続が終わっていたようで、生前に相続先を指定する遺言書を書いていたと思われます」
樹木さんの遺産の法定相続人は配偶者の内田と、娘の也哉子、婿養子として養子縁組を結んだとされる本木だ。しかし、本誌が把握する限り、内田は相続のすべてを放棄することに同意したとみられる。
樹木さんの死後、都内にある3つの戸建ては相続により名義が樹木さんから也哉子に変更された。樹木さんが2分の1、本木が2分の1を所有していた戸建てDの土地も、樹木さんから也哉子に名義変更されている。マンションも、本木や孫の伽羅(19才)の所有となり、「内田裕也」名義のものは、1つもない(下図参照)。
「配偶者が相続する場合、1億6000万円まで非課税という配偶者控除があり、大幅に節税できます。それでも今回、内田さんが不動産の相続を放棄したとみられるのは、樹木さんの遺志を尊重し、『2次相続』の対策を考えたのかもしれません」(前出・曽根さん)