タイに移住して印象的だったのは、やはりその価値観の違いだという。
「日本はワンオペ育児・家事が問題になっていますが、タイではお手伝いさんを雇って一緒に育てるイメージ。女性がキャリアを犠牲にすることなく働ける。その人のあるがままを他人が自然に受け入れるというか…。LGBTについてもそう。例えば見た目は明らかに男性だけど、普通に女子トイレに入る人を見ても、タイ人はみんな何も言いません」(Aさん)
タイでの生活にほれ込んだのは、物価の安さも大きい。
「タイでは、外国人の最低賃金は1か月5万バーツ(約16万円)が基準になっています。この金額は、タイでは十分すぎるほど。というのも、本当にお金がかからない。屋台のラーメンは約100円。グリーンカレーは約120円。タクシーの初乗りは約120円。通信費は1年間、4Gを通信制限なし使い放題で6000円くらい。毎月の家賃もプール・ジム付きで約3万円で住めます」(Aさん)
そんなAさんの生活に、日本の友人も影響を受け始めているという。Aさんと学生時代から友人だったイラストレーターのBさんは、久しぶりに再会したAさんが、タイ移住以前よりも明るく社交的な性格になっていたことに驚き、自らもタイに興味を持った。
「タイに行ってわかったのは、日本人はまじめすぎで頑張りすぎだということ。帰国後、つくづく『私は何と戦っていたのか』と思った。それから、『何が自分の幸せなのか』と改めて考える機会になりました。
なんというか、生きるハードルがグッと低くなりました。少し力を抜いて楽しく働き、その“余力”でプライベートを充実させる。でも、日本はその余力が“悪”とされがちなんですよね」(Bさん)