高齢の親が認知症になったとき、考えなければならないのが、お金の管理だ。親のキャッシュカードを子供が預かり、医療費や生活費など必要な資金を親のかわりにATMで引き出しているというケースは珍しくない。
親の判断力がしっかりしているうちに、将来、認知症になったときの資産管理を信頼する家族などに委ねると決めておくことができる制度に「任意後見」や「家族信託」というものがある。それでは、親子でそうした契約を結ばないまま、親が認知症になった後も、子供が親のカードで預金を引き出した場合、罪に問われるのだろうか。相続に詳しい北村真一・弁護士の解説だ。
「刑法の実体としては『親の財産の窃盗や横領罪』が成立し得ます。ただし、刑法は配偶者や血族、同居親族が窃盗など一部の犯罪を行なった場合については『親族相盗例』(刑法235条等)で刑罰を免除しています。警察の捜査対象になるケースはほとんどない」
注意が必要なのは、遺産分割協議の際、「どうしてこんなに残高が減ったのか」「お前が懐に収めているんじゃないか?」など、兄弟(相続人)の間でトラブルになりやすいことだ。
「協議がこじれると他の相続人から損害賠償請求を起こされたり、遺産の取り分から使った金額を差し引かれたりすることも考えられます。何にいくら使ったか、およびその必要性を記録しておくのが重要です」(同前)
※週刊ポスト2019年2月15・22日号