ミッドライフ・クライシスは、人がうらやむような成功者にも訪れる。要は、どれだけ成功したかではなく、どれだけ満足できているかということが大事なのだ。
症状は軽いものから重いものまでさまざまだ。今まで仕事一筋だったのに、突然、体を鍛え出して「トライアスロンに参加する」などと宣言したりする。起業や海外への留学を計画したり、新しい趣味などにはまったりするのは、これまでの実現しえなかった人生を取り戻そうとする心理なのだという。男性では家庭の束縛から解放されて、恋愛に走ったりすることも珍しくない。
深刻なのは、うつや不安障害、依存症になったりすることだ。男性も女性も更年期になっていることもあり、症状を悪化させてしまうこともある。
このようなミッドライフ・クライシスをどう乗り越えたらいいのだろうか。昨年末、ある女性と対談し、その軽やかな生き方から大事なヒントをもらった。
生活保護受給者と出会って新しい展開に
齋藤瞳さん(39歳)は、大学卒業後、警察官になる予定だった。しかし、「自分の長い人生がすべて決まるような気がして」、家族に内緒で、直前になって断ってしまった。「安定を求めたほうがよかったのではないか」と、今でも少し思うが、そのときの自分は「無敵に思えた」と屈託なく笑う。
結局、大手の不動産会社に就職。営業部門に配属された。営業成績は抜群だったという。それでついつい「私、才能あるなあ」と思ってしまった。なんと、20代で独立したというから、勢いがある。しかし、結果は惨憺たるもので、お客さんはまったくつかなかった。
「私の才能じゃなかった。会社の看板のお陰だった。よい勉強になりました」
齋藤さんはワッハッハと、豪快に照れ笑いをした。人生においてもなかなか思い切った行動をとるが、笑い方にもそれが現われている。
その後、彼女は会社をたたみ、結婚し、出産した。育児も一段落したので、地元の不動産屋で事務の仕事に就いた。そこで新しい展開が始まる。生活保護を受けているお客さんと出会ったのだ。