そして、今は入居者のお葬式をどうするか、という問題にも頭を悩ませている。最後は親しい人たちでお焼香をしてあげたいと思っても、行政はプライバシー保護のため家族以外には知らせてくれない。何かいい解決方法はないか……課題は尽きない。
それにしても、彼女の目の付け所はすごい。「自分の人生の意味は何か」なんていう青臭い問いに惑わされるのではなく、目の前の困っている人のために働いている。
ぼくたちは生きていく以上、変化していくのが運命だ。自分自身も変化し、自分を取り巻く状況も変化していくなかで、いつまでも同じ価値観や生き方を押し通そうとするのは所詮、無理がある。
ミッドライフ・クライシスはそうした変化や成長に対応していくための「成長痛」もしくは「脱皮の苦しみ」なのだ。そんなふうに捉えることができれば、何も恐れることはない。中年よ、大志を抱きつつ、ほどほどに危機を楽しめ、と言いたい。
●かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。著書に、『人間の値打ち』『忖度バカ』など多数。
※週刊ポスト2019年2月15・22日号