海外のマスコミは、技術移転強制、補助金問題といった構造問題では溝が残ったと指摘しているが、中国側が譲歩することはないとアメリカ側も考えているのかもしれない。それでもこの問題で厳しく中国を攻め立てているのは、市場の自由化、輸入拡大で最大限の成果を得ようという戦略があるからだろう。
トランプ大統領はギリギリまで中国に圧力をかけるだろうが、“米中貿易協議が物別れに終わる可能性はまずない”という見方が増えている。多くのグローバル機関投資家がそのように予想しているから、昨年12月26日を底値にNYダウは強い上昇トレンドを形成しているのではないか。彼らは同じ発想からA株を買っているとも考えられる。
トランプ大統領の狙いは、中国にアメリカ製品を買わせることであり、アメリカ企業の投資を加速させることである。中国を排除することではなく、中国に食い込むことである。そう考えると足元のアメリカ市場、中国本土市場の急回復、急騰も納得できよう。
3月2日の追加関税率引き上げの延期、習近平国家主席とトランプ大統領との会談、トランプ大統領の“勝利宣言”(?)と続けば、こうした見方は正しかったと証明されるが、はたしてどうなるか。その通りになれば今後、アメリカ株、中国株には強い上昇トレンドが出るだろう。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。