親の財産の整理手続きを難しくするのが、認知症だ。川崎相続遺言法律事務所の小林賢一弁護士がいう。
「携帯電話や購読している新聞は、親の契約を子供が勝手に解約することは法律的にはできません。手続きを代行する旨を記した本人の委任状が必要ですが、認知症を発症すると、有効な委任状を作成できない場合もある」
こうした状況では親名義の銀行口座も事実上凍結される。最悪の事態に備えて積極的に活用したいのは、「任意(成年)後見」と「家族信託」という2つの制度だ。
任意後見は、あらかじめ家族の1人を後見人に指名しておけば、認知症が進んだ段階で後見人が家庭裁判所に届け出て親の財産を管理できる制度だ。後見人になった子供は親の口座などから預金を引き出す権限を持つが、使途は裁判所が選任した後見監督人(弁護士など)のチェックを受ける。