「親」といった時に、多くの人にとってそれは“実の両親”だけを指すものではない。結婚して家庭を持っていれば“義理の両親”がいる。ひとたび義父母とお金や諸手続きを巡るトラブルに巻き込まれると、実の親との問題よりも面倒なことがあるのだ──。
大手金融機関に勤める都内在住の50代男性は、80歳を超えて足腰が弱くなった義父から「老人ホームに入居するので、保証人になってほしい」と頼まれた。
顔を合わせるのは正月や盆くらいだが、専業主婦の妻は3姉妹の長女で、妹2人は嫁いで地方に暮らしている。「近くに住んでいて頼れる親類はあなたくらいだから」という妻からの頼みもあって承諾した。
ところが、入居後しばらくして義父の体調が優れなくなる。ホーム側からは介護・治療方針を巡り、確認の連絡が相次いだ。仕事が多忙だったこともあり、ホームの判断に任せていたが、容体が悪化して緊急入院となると、義母や義理の妹から、「私たちは何も聞いてない!」と一斉に責められた。
義父はその後回復してことなきを得たが、この男性は「こんな面倒なことになるとは……」と嘆息する。弁護士の綱藤明氏が解説する。
「老人ホームの入居などで必要な保証人は、金銭の保証人という意味だけでなく、身元引受人や死後の遺体の引き取りなども含まれる場合がある。施設側からすれば、何かあった時にすぐに連絡する人。風邪やインフルエンザでも連絡が来る。そうした手間を覚悟した上で引き受けないと、トラブルにつながる。車のローンの保証人など金銭的な負担リスクのみの場合も含め、よほど信頼関係がある場合を除き、引き受けるのは避けたほうがいいでしょう」
※週刊ポスト2019年3月8日号