唯一トイレで感じた「まだまだ発展途上なんだな…」
格安の寮も完備されたこうした外資系企業に勤める人々は当地ではかなりの「エリート」だったということもあるのですが、当時「発展途上国」と感じることはほぼなかったです。当然パクリのDVDなどは売られていたものの、道は広くきれいに掃除されており、レクリエーション施設も整い、ビーチでは多くの人が海水浴を楽しんでいました。
数年前、中国のビーチでは、日焼けをしたくない女性が謎のマスクをかぶる映像が日本のテレビで話題となりましたが、当時はまだありませんでした。私も、アジアカップの大ブーイングがあったため、中国に対する呆れも多少あり、どこかで「日本よりも遅れた中国」を見つけようという意地悪な目で見ていたものの、それはあまりなかったです。
実際にHPのコールセンターの取材をしてみると、中国人従業員は日本語が堪能で、仕事場でも各人の机にはパーテーションがあり、PCと電話も各自ついている。私がかつて働いていた会社では、パーテーションがなく、さらには乱雑過ぎる机の人も多かっただけに、これだけでも「中国のオフィス、すげー!」と思いました。しかも、昨今のアメリカのIT企業に見られるように、広大なカフェテリアのビュッフェ方式で好きなだけ食事を摂ることができるのです。宿泊したホテルも5つ星のシャングリラホテルですから、快適そのもの。
外食も初日の高級羊鍋店は、横浜の中華街の高級店に行ったような感じで、清潔感もありました。ただ、翌日の飲み会で行った、地元の人しか来ない羊の串の店は若干様相が異なっていました。この時の様子を、当時一緒に行った雑誌『テレビブロス』の木下拓海編集者は次のように振り返っています(https://cakes.mu/posts/2710)。
〈木下 ちなみにその店のトイレは穴掘っただけのやつで、しかもその穴から山盛りになったウンコがはみ出してるんです。全人生で見たどのトイレよりも汚かった。その穴の周囲には鶏のケージが大量においてあったんですが、大酒飲み対決が終わった直後、中川さんがフラーっとトイレのほうに行ったと思ったら、トイレの方向から急に「バターン!」って大きな音と「コケコケッ!」っていう鶏の声が聞こえてきたんです。「まさか!」と思って見に行ったら、崩れたケージの山の中に、鳥フンと羽毛と人糞だらけになった中川さんが大の字になってぶっ倒れていたんです。〉
この時のトイレだけが、大連で感じた「あぁ、まだ発展途上なんだな……」という瞬間でした。