あいさつ自体を嫌がっているわけではないが、やはり気を遣うのが苦手というのは、金融系で働く20代男性会社員Bさんだ。
「あいさつは基本的に必要だと思いますよ。してもされても気持ちがいいものですよね。でも、私は退社の際に『お先に失礼します』と大声で言うのは避けるようにしています。
というのも、上司に言うと、思い出したように『そうそう、あの件どうなってる?』『これ頼むわ』と仕事が降ってきたり、雑談が始まったりして、帰社時間が延びることがよくある。急ぎの仕事ならともかく、明日以降で問題ないような、どうでもいいようなことを言われて面倒くさいんです。おかげで退社スキルが高くなりました(笑)。それに、残業をしている人もいるなか、先に帰るのは、少し気を遣うというか……」(Bさん)
多くの会社ではいま、働き方改革の進行に伴い社員の出退勤の時間にズレが起きている。制度でいえば、フレックスタイム制や時短勤務などだ。それらがあいさつレスの要因の一つになっているのではないかと、別のIT企業の男性会社員Cさん(20代)は分析する。
「出社が遅い人や退社が早い人にあいさつって、なんとなく気まずくないですか? 出退勤が違うなら、人によって仕事に集中している時間も違いがあるわけで、あいさつをわざわざ返させるのは悪いとも思ってしまう。とくにエンジニアの人は、イヤフォンをつけて作業に没頭していることも多く、なおさらです。私も集中している時は、あいさつをきちんと返せずに無視してしまったようになったこともある。だから、あいさつをしない人も、決して悪意をもってしないわけではないと思うんですよね」
「あいさつができない人は社会人失格」とはよく言われてきた言葉だが、あえて“余計な”あいさつをしないという働き方も増えつつあるようだ。