強制婚前検診制度について効果があるかどうかはともかく、結婚に関して子孫を残すことを重視しすぎている印象だ。子孫を残せなくとも相手と結婚して社会的に認められたいと思う人々の存在を軽視しており、また、そうした人々の基本的な人権に制約を与えているとも捉えられる。国家として、社会として優性な子供だけを残したいとする考え方、合理性だけを重視するような考え方は日本や、欧米社会ではなじまないだろう。
最新の科学では、両親の遺伝子を直接調べることで、生まれる子供がどのような病気にかかり易いのか、わかるようになってきた。コストさえ下がって来れば、遺伝子検査を始めかねない。
中国では、1980年以降、一人っ子政策を本格的に実施した際、生まれる前に性別がわかることを利用し女の子であれば堕胎するといったケースが多かったことで、現在、男女の人口比率が偏ってしまい、そのことが、独身男性の急増を招いている。
最近では、中国の研究者が遺伝子操作を施し、HIVにかかりにくい体質の双子を誕生させたと報道されている。これは重大な倫理違反だとして国際的に批判されている。
もし、アメリカの対中強硬派やその背後にいる支持者がキリスト教的価値観を強く持つとしたら、合理主義からなる中国的価値観とは相容れないだろう。本質的な部分で、中国と西側諸国との間には見えない壁がある。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。