2004年の乳がん発覚以降、転移と再発を繰り返し、「全身がん」状態だった樹木さんは、「自宅で看取ってほしい」と娘たちに伝えるなど、生前から着々と自らの“旅仕度”を進めていたようだ。不動産の相続についても、事前に入念な話し合いがされていたと見られる。
一般的な相続では、財産評価を経て死後10か月以内に遺産分割協議が行なわれる。登記等を確認する限り、樹木さんの場合、半年ほどですべてが済んでいるので、生前の取り決めに従ってスムーズに手続きが進んだことが窺える。
「夫に財産は遺さない」
興味深いのは、樹木さんの夫・内田裕也(79)に一切の不動産が相続されていないことだ。50年近い結婚生活の大半が別居状態だった樹木さんと内田の関係は、一般的な夫婦と同じ物差しでは測れない。とはいえ法的には、配偶者の内田は遺産の半分を相続する権利を有する。
相続を考える上で重要なのは「二次相続」の問題をどう考えるかだ。高齢者の場合、遺産を相続した配偶者もそう遠くない将来に寿命を終える可能性が高い。そうなると、配偶者への一次相続時、その後の子への二次相続時と、短期間で2度の相続が発生し、相続税を二重に払わなければならないケースが出てくる。将来的には子から孫への相続時にも税金が発生する。
樹木さんの例では、仮に内田が不動産を相続し、内田の死後、也哉子らに相続するよりも、樹木さんから直接也哉子らに相続したほうが節税になる。
「樹木さんは生前“私が死んでも、夫に遺産は遺さない”と宣言していた。樹木さん特有のユーモアと受け取られていましたが、子や孫たちの実利的な面にも配慮していたのではないか」(前出・芸能関係者)
※週刊ポスト2019年3月22日号