相続で親が遺産として不動産を残すケースでは「共有名義」という落とし穴がある。大阪在住のA氏は、弟と2人で父親が残した実家の土地と建物を相続した。その後、建物を壊して土地を更地にするか、建物ごと売却するかと思案していると、疎遠だった叔父(父の弟)から数年ぶりに電話があり、こう告げられた。
「あの家は、兄貴と俺の共有財産や。兄弟で親から相続したんや」
A氏が驚いて不動産登記を確認すると、確かに父と叔父の共有名義だった。以降、叔父はたびたび連絡をよこし、「更地にしてアパートを建てろ。儲けは折半や」「勝手に売ることは許さへん」と捲したてるようになり、兄弟は困り果てた。
税理士で司法書士の渡邊浩滋氏は、「共有名義の不動産は相続トラブルの元凶となりやすい」と指摘する。
「共有名義になっていると、被相続人が所有していた分しか相続できません。A氏と弟の2人が相続できるのは父親名義分の2分の1ずつだけ。厄介なのは、共有名義の不動産は他の所有者が認めない限り処分できないことです。叔父の了承がないと、A氏は建物を壊すことも土地を売ることも実質的に不可能です」(渡邊氏)
どうしても売却したい場合、自分が相続した分のみ売りに出すことはできるが、「そんな物件を買う人はまずいない」(同前)のが現実だ。