4月15日、市場関係者が注目する中国の経済統計が発表された。マスコミでは、1~3月の実質経済成長率が前四半期と比べ、0.1ポイント低い6.7%にとどまったことを強調する論調が目立つが、ポイントはそこではない。同時に発表された3月の月次統計が大きく改善していることの方が重要である。
3月の鉱工業生産を見ると6.8%増で、1、2月合計の5.4%増と比べ1.4ポイント改善、市場コンセンサスの5.9%増と比べ0.9ポイント上振れした。セメント、非鉄金属、鋼材などの生産回復が顕著である。昨年10月に実施された政策の息切れが心配された自動車についても伸びは回復している。
生産の回復を支えたのは不動産投資や公共投資の加速である。3月累計の全国不動産開発投資は6.2%増で、2月累計の3.0%増と比べ3.2ポイント高い。また、水利、環境、公共施設などの投資は30.5%増で、2月累計の26.6%増と比べ3.9ポイント高く、交通運輸、倉庫、郵政事業は7.9%増で2月累計の4.8%増と比べ3.1ポイント高い。
消費も3月は堅調である。3月の小売売上高は10.5%増で1、2月合計の10.2%増と比べ0.3ポイント高い。
そのほか、貿易面では輸出は二桁減から二桁増、輸入は減少幅を縮めており、市場の予想以上に、内需、外需の戻りは速いようだ。
もっとも、こうした3月の回復に対して、春節の影響であるとか、一過性の戻りであるといった見方もある。しかし、今年は第13次五カ年計画の初年度であり、今後、省エネ・環境、新エネルギー、通信、ハイテク産業などでは、新たに始動するプロジェクトが急増する可能性が高い。
また、3月に開催された全人代では積極財政政策の加速、金融緩和政策の継続、不動産在庫の処理加速など、景気下支え効果のある政策が打ち出されている。
構造改革を進める中で、長期的に成長率が高まる可能性は低いが、第2、第3四半期に限れば、第1四半期並みの成長が達成できそうだ。
中国経済減速リスクは一旦遠のいたと見て良いだろう。
文■TS・チャイナ・リサーチ 田代尚機