親が亡くなりいざ「相続」の段となった際、子のうちの1人が親と同居しているケースでは、遺産分割でトラブルに陥りがちだ。
埼玉県在住の80代のA氏は3年前から認知症を患っていた。長男一家が同居して自宅介護を続けていたが、肺炎を患い、昨年の暮れに亡くなった。四十九日が終わり、兄弟で「そろそろ遺産の整理を始めよう」という話になった。確認を進めるなかで、次男が次第に疑いの眼差しで長男を見るようになっていった――。
これは遺産分割協議では珍しくない光景だという。円満相続税理士法人代表で税理士の橘慶太氏が指摘する。
「親の預金通帳を初めて見た弟が、『あれ、残高が少なすぎないか』と不信感を抱く。その後、使途がよくわからない引き出しの痕跡を見つけて、『ひょっとしたら、兄貴が勝手に使っていたんじゃ……』と疑いを持つ。こうした雰囲気は何となく相手に伝わるため、『何で俺がそんな目で見られないといけないんだ』と反発を招き、話がどんどんこじれていくのです」(橘氏)
親が認知症の場合は、実際に「流用」があるケースも珍しくないから複雑だ。