遺産がどのような形で遺されているかを家族が把握しておくのは非常に重要だ。2011年に父親を看取った経済アナリストの森永卓郎氏(61)は、父親の遺産に振り回された苦い記憶を持つ。
「父は2006年に脳出血で倒れ、介護の末亡くなりました。どの銀行に口座があるのかわからないまま亡くなったので、すべて確認するのが実に大変だった。
今は改善されたようですが、当時は銀行から“支店名までわからないと、調べようがない”と言われてしまって。仕方がないから、施設に入る前に父が一人暮らしをしていた実家にたまっていた郵便物をひっくり返して、金融機関からの書類を全部確認しました」(森永氏・以下同)
最終的に、森永氏の父親は10近い金融機関に口座を持っていた。だが、面倒はさらに続いた。
「改めて銀行に問い合わせると、今度は法定相続人全員が署名捺印した同意書類と、父本人の戸籍関係の書類がないと、口座にいくら入っているのかを開示できないと言うんですね。
それだけ苦労して、やっと口座を開示してもらえたんですが、中には『残高700円』というものもあって……。ドッと疲労感に襲われました。結局、父の預金の確認だけで、丸々2か月かかりました」
この経験によって、次のような教訓を得たという。
「生前に、父とよく話し合って資産のリストを作っておくべきだったと痛いほど思いましたし、それを教訓に、私は家族に迷惑をかけないようにと、預貯金はもちろん生命保険や証券、その他金銭的価値のあるものの一覧を書き出しました」
※週刊ポスト2019年3月22日号