「女心は秋の空」というが、変わりやすいとされるのは気分だけではない。女性が加入する年金制度の種類も、あっちに行ったりこっちに行ったり、一度の人生の中で何度も変わるから、実に厄介だ。ブレインコンサルティングオフィスの北村庄吾さん(社会保険労務士)が話す。
「男性は社会人になって一度就職すると定年までサラリーマンとして働き続ける人が多いのに比べて、女性のライフイベントは多彩です。社会に出て会社員になっても、結婚や出産を機に、退職したり転職する人は少なくない。そもそも、就職せずに、実家で“家事見習い”をする女性も、かつては多かった。出産後、子供が大きくなれば、再就職したり、パートとして働きに出ることもあります。
そうすると、その時々で正社員やパート、フリーランスなど就業形態が変わり、それに伴って、加入する年金制度も変わるのです」
年金には、主に会社員が加入する「厚生年金」と、自営業者やフリーランスなどが加入する「国民年金」の2つがある。厚生年金加入者を「第2号被保険者」、国民年金加入者を「第1号被保険者」という。それに加え、会社員の妻には、保険料を納めなくても国民年金に加入したことになる「第3号被保険者」という制度が適用される。北村さんが話す。
「男性は、主に第2号(厚生年金)に加入し続ける人が多いのに対し、女性は一生のうちでこの3つの制度を転々とするケースが多い。たとえば、OLとして働き、結婚して専業主婦になり、後にパート(厚生年金加入)で働いた場合、第2号→第3号→第2号と行ったり来たりすることになるのです。
雇用形態が変わる時に手続きを忘れたりすると“切り替えミス”が起こり、年金記録に『空白期間』が生じやすい。だから男性より女性に年金の未払いが多いのです」