ワイドショーでは莫大な遺産を巡る「争続問題」が取り沙汰されることが多いが、その裏には、思わず膝を打つほど見事な終い方を遂げた往年の大スターたちもいる。たとえば樹木希林さんは、夫が亡くなった時の二次相続のリスク回避まで想定し、生前に専門家もうなる高度な相続テクニックを使っていた。その一方で、「うちは正反対」と語る遺族もいる。
放送作家や作詞家、ラジオパーソナリティーなど、マルチに活躍し、2016年7月に亡くなった永六輔さん(享年83)は、生前、財産やお金について一切語らなかったという。永さんの次女・麻理さんは苦笑する。
「父は“お金の話をするのははしたない”という考えで、永家ではお金の話題はある種タブーでした。自分がいくら財産を持っているのか、最期まで知ろうともせず亡くなりました」
代わりに永家の財産を管理したのは妻の昌子さんだった。しっかり者の昌子さんは税理士とタッグを組み、会社組織を作ったり、不動産を購入するなど節税対策を進めた。年間110万円までは非課税となる「暦年課税制度」を利用して、4人の孫が誕生した時から生前贈与も行った。
しかし、2001年6月、一家を悲劇が襲う。昌子さんが末期の胃がんと診断され、翌年1月に68才の若さで息を引き取った。最愛の妻の闘病中、永さんは心労で15kgもやせたという。だが、深い悲しみが癒える間もなく、永家のお金の管理は2人の娘たちが引き継ぐことになる。