住んでみたい街の理想と現実には、得てして大きな差があるものだ。憧れのあの街は果たして本当に素敵な街なのか? まったくノーマークだけど、実は住みやすい街は? 今回は「神楽坂」(東京都新宿区)について、ライターの金子則男氏が解説する。
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東京は関東平野にすっぽり覆われた街ですが、23区内は坂だらけ。乃木坂、志村坂上、中野坂上など「坂」が付いた駅がいくつもありますが、とりわけ坂だらけなのが、今回取り上げる「神楽坂」です。通な大人が集う街・神楽坂は、住む街としてどうなのでしょうか。
鉄道は東京メトロ・東西線のみ。大手町まで9分ですから、文句を言うのは贅沢の極みですが、新宿、渋谷、池袋、上野など、主要ターミナル駅に行くにはいずれも乗り換えが必要です。東京駅へは大手町経由で行くとして、羽田や成田へのアクセスも不便。近くに牛込神楽坂駅(都営大江戸線)や江戸川橋駅(東京メトロ有楽町線)があるので、これらを組み合わせればそういった問題はいくらか解消できますが、少々の不満は残ります。
道路状況はかなり厳しいです。何と言っても悪名高いのが、飯田橋と神楽坂を結ぶ駅前のメインストリート。時間帯によって一方通行の向きが変わるという、非常に変則的なルールが採用されています。これは「田中角栄が国会に行くため、(そして帰るため)」に、このような交通ルールになったという都市伝説がありますが、理由はどうであれ、混乱することは必至。その他の道も一方通行が多く、狭くて込み入っており、車はダメな街です。坂が多いので、自転車も厳しいです。