Aさんが生まれ育ったのは、かつて最寄りの鉄道駅まで徒歩30分以上かかる “陸の孤島”と呼ばれた地区。目と鼻の先が埼玉であり、他県出身者に埼玉と間違われることもしばしばだというが、「確かに行動圏が埼玉なので、仕方がない」と苦笑する。
「夏は、しらこばと水上公園(越谷市)のプールに行くのが恒例です。海は遠いですからね……。足立区民にとってオアシスです。休日の買い物は近場なら北千住か西新井の2択になりますが、越谷レイクタウンまで行った方がいろいろ揃うから、結局そこまで足を運ぶ人も多いです」(Aさん)
同じく足立区民で教育関連企業で働く30代男性・Bさんも、映画を見て他人事とは思えず、“埼玉熱”に浸った一人だ。蕨市出身の友人とともに浦和で鑑賞し、「埼玉県民との違いが露呈した」と本音をもらす。
「公開終了後、劇場で拍手が巻き起こって、びっくり。なんだかんだで埼玉県民は埼玉が大好きなんだなと感じました。足立区民も地元が好きで、就職しても結婚してもずっと住んでいる人が多い。ただ、埼玉県民と違うのは、自分で自虐しても他者からディスられることに慣れていなくて、流すことができずムッとしたり、落ち込みがちな人も多い気が……。“ギリギリ東京都民”というプライドが邪魔しているのでしょうか」(Bさん)
『翔んで埼玉』のヒットの陰で、足立区民は複雑な心境になっているようだ。