複雑な年金制度。申請ミスや切り替えミスなどで、もらい損ねてしまう人は少なくない。だが、もらい損ねと同じように気をつけたいのが、年金受給に関する税金対策だ。
通常、年金受給者の所得税はほとんどの場合微々たるものだが、正しく手続きをしないと、知らぬ間に少なくない税金を払わされることになる。
年金受給者には、毎年9月頃に年金機構から「扶養親族等申告書」が届く。この申告書に配偶者など扶養家族の人数や、所得を記入して返送しなければならない。会社員の年末調整のようなもので、その内容をもとに税額が計算され、翌年4月以降の年金受給額が決定する。
もし、この申告書を提出しないとどうなるか。静岡県在住の主婦、桐谷さん(66才)は、こんな体験を語る。
「夫婦2人で、年金だけで暮らしています。夫(68才)の年金額は年間220万円、私の年金額は年間70万円ほどです。これまで毎年、扶養親族等申告書は返送しきちんと手続きしてきました。ところが、昨年届いた申告書は、書式がガラッと変わってしまい、よくわからなくなった。間違えそうで不安だったので、手続きを近くに住む息子にお願いしました。
安心していたところ、今年6月に振り込まれた年金額を見ると、いつもより2万5000円も減っていたんです。息子に確認すると、手続きをうっかり忘れていたとか。申告書を出さなかっただけで、こんなことになるなんて。人に任せてはいけませんね」