しかも、市場再編直後の一時的な下落にとどまらず、「これまでもさほど買われてこなかった時価総額の低い銘柄がさらに見向きされなくなり、割安なまま放置されることになりかねない」(カブ知恵代表・藤井英敏氏)とみられているのだ。
だからこそ、すでに市場再編を見越した対応を進める企業もある。経済ジャーナリストの和島英樹氏が語る。
「時価総額が500億円前後の企業のなかには、ここにきて株価上昇につながる自社株買いを始めたところがあります。発表直後にあっという間に株価は1割ほど上がり、時価総額は550億円を超えた。上場基準にはコーポレートガバナンスが加味されるという情報もあるので、今後は社外取締役を増員する企業も出てくるでしょう。また、時価総額の低い企業同士が合併して時価総額を高めるなど、なんとか最上位市場に残ろうとする動きが増えると見ています」
東証一部に属することは、株価やビジネスにまつわること以外にも、様々な“メリット”がある。一般的に経営陣や幹部にとって、一部上場は“最上級の名誉”となるからだ。
まず上場すると、東証で新規上場セレモニーが開催される。特別応接室で東証役員と懇談後、上場通知書と記念品が贈呈される。ここからはテレビなどでもおなじみ、上場を告げる鐘を鳴らす「打鐘」だ。VIPルームに通されて木槌で鐘を打つ経営者の顔は一様にほころぶ。「東証アローズの円形電光掲示板に自社の名前が流れるのを見て感動した」と声を上げる経営者も多い。なかには、記念配当を出す会社もある。それほど企業にとって「一部上場」は“誉れ”なのだ。