ところが北朝鮮は、既に保有している核とミサイルはどうにかして隠し持ち、「新たに核実験をしない」「新たにミサイル発射実験をしない」といった程度で、経済制裁の解除を狙った節がある。
北朝鮮はトップ会談で話をまとめてしまえば、どうにかなると読んでいたのだろうが、トランプ大統領側はまず非核化ありきで、それができなければ経済制裁を解除しない、というスタンスを崩さなかった。
米国側は今後も折れるつもりはないだろう。経済制裁が効果を上げていることは明白だから、折れる必然性がないのだ。米国に届く弾道ミサイルと核をなくすことが、米国の真の目的であり、北朝鮮がそれに応じなければ、時間をかけて「兵糧攻め」を継続すれば良い。
米国側は急いでいない。反対に北朝鮮は、既に行われてきた経済制裁が効いているのだから、時間的にも追い詰められている。
米国のスタンスは変わらずで、急いでいないのだから、間を開けずに何かしらのカードを切らざるを得ないのは、北朝鮮になるのだろう。北朝鮮の方から動かなければ、この問題は、「棚上げ状態」が続くのは間違いない。
ということは、当面のところは、北朝鮮が何かしらの形で動かない間は、外国為替市場を含む金融市場で取引をする際に、いわゆる「北朝鮮問題」は考えなくとも良い、という結論になる。
(2019年03月26日日本時間07:30記述)
◆松田哲(まつだ・さとし):三菱信託銀行、フランス・パリバ銀行、クレディ・スイス銀行などを経て、オーストラリア・コモンウェルス銀行のチーフ・ディーラーとして活躍。現在は松田トラスト&インベストメント代表取締役として外国為替や投資全般のコンサルティング業務を行う。HPは「松田哲のFXディーラー物語」(http://matsudasatoshi.com/)。メールマガジン「松田哲の独断と偏見の為替相場」も発信中。