様々なものが値上げした今年の4月。経済ジャーナリストの荻原博子さんはこう説明する。
「今回の食品の値上げは、主に人件費や原料コストの上昇によるもの」
これまでは、原料コストが上がっても、企業努力で価格の据え置きを続けてきたが、ついに企業も悲鳴を上げたというわけだ。
『食卓塩』や『あずきバー』、『ガリガリ君』は24~25年ぶり、『クノールカップスープ』は33年ぶりの価格改定となるほどだ。
「昨年の小麦の値上げの時は、どの小麦商品も軒並み値上げしましたが、今年の値上げは一部のメーカー商品のみ。塩も『食卓塩』は値上がりしましたが 岩塩や輸入塩はそのまま。値上げ商品を避ければ、家計への打撃はさほどありません」と話すのは、節約アドバイザーの丸山晴美さんだ。
「トマトソースなどは見切り品のトマトを買って手作りするなど、代用も可能です」と続ける。
むしろ値上げにあおられて、まとめ買いをし、余計な出費を増やさないよう注意を促す。とはいえ、今後は今の家計のままではダメと釘をさす。
「気にするべきなのは、国民年金や医療費の値上げ。食量費やレジャー費と違い節約や代用ができないので、今と同じお金の使い方では、貯蓄が確実に減ります」(荻原さん)
医療費では、診療料だけでなく、大病院を受診する際に必要な「選定療養費」が一律で課されることに。これは、大病院が重症患者の治療に専念しやすくするためだ。
「大きい病院で診てもらったほうが安心だから」と、ただの風邪で大病院にかかると、1万円以上かかってしまう、ということもありうるのだ。
値上げされても、給料がそれ以上に上昇していけば問題ない。しかし、その見通しは暗いようだ。
「政府や日銀が2年以内に2%のインフレを宣言してからもう3年。大部分の人の賃金はいまだ増えておらず、景気回復とは程遠い状況です」(荻原さん)
さらに、この先値上げは続かないと荻原さんは続ける。なぜなら、これ以上値上げすると消費者が買い渋りをするから。
厚生労働省の調査(平成26年国民生活基礎調査)によれば、生活が「大変苦しい」は約3割で、「やや苦しい」を合わせると6割以上にも上る。
「今後の先行きは不透明。確かなことは、現金を持っておくことです」(荻原さん)
目先の値上げに右往左往せず、当面給料は上がらないものと心得て、足元の貯蓄を固めることが先決だ。
※女性セブン2016年5月5日号