563万人の人口のうち、約4割が自国以外の出身者が占めることもあり、世界中の料理が勢揃いするシンガポールでは、食に悩むことはほとんどない。しかし日本と同じ感覚で飲食すると、やはり倍以上かかるという。
「日本食は人気で、チェーン系定食屋もありますが、日本では800円ぐらいの定食でも2000円ぐらいします。日本では一人あたり3000円くらいで済む居酒屋チェーンでも、2倍の6000円ぐらいかかります」(Aさん・以下同)
短パンでOK、日本にはない“ゆるさ”
Aさんにとって、シンガポールで生活する魅力とは何なのか。
「年中高温多湿で時折モンスーンはあるものの、最高気温が32度、最低気温は25度前後。年中短パンで生活でき、周囲もTシャツ、サンダル履きというラフな服装をしているため、日本で働いていた時のような“常にちゃんとした格好をしなきゃ”というプレッシャーはありません。
また、人々が良い意味でドライで、“個”が尊重される。互いに干渉しすぎることがなく、仕事でも必要最低限の役割をこなしていれば、何も言われない。日本の会社で感じた、先輩や上司の言うことに従わないといけない体育会系的な同調圧力や、ネクタイの締め方ひとつで注意されるといった、縦社会ならではの生きづらさは、ここにはありません」
大都会過ぎて物足りない?
暮らしやすい一方で、いくつか気になる点も出てきたという。
「あまりにも都市として完成され過ぎていて、刺激は少ない気がしています。そもそも狭いうえに、娯楽施設もあまりない。休日には映画を観に行くかモールで買い物をするぐらいしか選択肢がなく、週末になると、多くの人がモールに大挙するので、どこかに行けば必ず知り合いに会います。テナントも、ユニクロ、無印良品、ZARA、H&M、マクドナルド、やよい軒など、どこに行っても同じ店が入っている。マリーナ・ベイ・サンズの屋上スカイデッキや、動物園などの日本人の多い観光スポットも、一度行くと飽きてしまいますしね。
また、過ごしやすい反面、季節感がないので、物足りない気分になることも……。息抜きに海や山に行ったり、大自然に触れたりしようと思うと、海外旅行をすることになります。住みやすいといっておきながら、贅沢な言い分ですけどね」