対して、「妻の繰り上げ」なら在職老齢年金によるカットは「ゼロ」で、本来受給額から月額2万円の減額で済む。前出・北村氏が続ける。
「繰り上げ受給を選ぶ場合、基礎年金と厚生年金をセットで繰り上げることしかできません。“夫の基礎年金だけを繰り上げる”といった選択ができないため、サラリーマンで定年まで勤め上げた夫の年金をまるまる60歳まで繰り上げてしまうと、再雇用で働いている人でも、28万円の支給停止ラインに引っかかってくることが多い。そういった観点からも『妻の繰り上げ』は、使い勝手がいいのです」
妻の繰り上げ受給で家計が助けられるのは、専業主婦のケースに限らない。
「夫の定年後、苦しくなった家計を助けるために妻が働きに出た場合でも、繰り上げによる年金収入が月4万円程度であれば、よほど長時間働かない限りは妻の年金が支給停止の対象になる合計28万円のラインを超えるとは考えにくい。そもそも、短時間のパートなら『厚生年金に加入しない働き方』となるケースも少なくないでしょう」(同前)
年金のもらい方を夫婦で考えることで、工夫できる幅は大きく広がる。
※週刊ポスト2019年4月19日号