イギリスがEUからの離脱(ブレグジット)に揺れています。現地時間4月12日(日本時間13日)、イギリス議会下院がEU離脱案を承認しない場合、イギリスは合意なくEUを離脱することとなります。
4月5日にイギリスのメイ首相は、EUに対して離脱期限を6月30日へ延長することを要請しましたが、フランスやオランダから早速難色を示され、状況は極めて流動的です。
このメイ首相の離脱期限延長要請を背景に、ポンド/ドルは売られましたが、日々の為替レートの動きから鑑みると、今のところ相場に緊迫感はなく、それが油断からなのか、あるいは、私が心配し過ぎているためなのか、判断しかねています。
投資家が相場の先行きに不安や恐怖を感じている時ほど上昇するといわれる「VIX指数(恐怖指数*)」の日足をチェックすると、現在の恐怖度は低水準となっています。
【*VIX指数:恐怖指数とも呼ばれ、数値が高いほど投資家が相場の先行きに不透明感を持っているとされる。シカゴ・オプション取引所(CBOE)が、S&P500を対象とするオプション取引のボラティリティー(価格変動率)を元に算出、公表する指数】
リーマン・ショックで20円以上円高に進んだドル/円
ここから、気をつけておきたいことは、ネズミが本能的に沈む船から逃げ出すように、マーケットに何らかの異変が出てこないか、アンテナを張っておくことです。
一番怖いのは油断です。完全にノーガードでいるところに、相場の急変があると、マーケットはパニックし、大相場になります。パニックに巻き込まれないようにするためには、意識して警戒することが必要です。
パニックのスケールは、時にトレーダーの想像を絶することがあります。2008年9月のリーマン・ショックの際は、2~5か月間で、ドル/円は22円、ユーロ/円は46円、ポンド/円は80円、豪ドル/円は38円、NZドル/円は34円下落するという超円高を記録しました。
1度大きな金融パニックが起こり、それを経過すると、「あれほどのパニックはもう起きないだろう」と思われがちですが、マーケットの歴史をみれば、数年ごとにそれに匹敵、あるいは更新するような大きなパニックが毎回起こっています。
イギリスが合意なき離脱となるかどうかはわかりませんが、最悪を見越して、油断せずリスクに身構えておく必要があります。
【PROFILE】水上紀行(みずかみ・のりゆき):バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。主著に『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』(すばる舎)、『FX常勝の公式20』(スタンダーズ)他多数。メールマガジン「水上紀行のFXマーケットフォーカスト」配信中。ツイッター@mizukamistaff