そのように行き場のない世界中のマネーが米国債(特に10年もの)に集中し、米国債の買いが進んで債券価格が上がれば、金利は下がるのが当たり前の話である。それによって長短金利が逆転する「逆イールド」につながっているのだ。
つまり、今回は、2007年、その前の2000年の時とは本質的に異なる「逆イールド」であり、景気後退のサインではない、というのが私の見方である。
目先で懸念材料とされている米中貿易摩擦問題やハードブレグジット懸念も必要以上に長引くとは考えにくい。特に米中貿易摩擦問題は中国から米国への輸入額が約5000億ドルであるの対し、米国から中国への輸入額は約1300億ドルと規模は約4分の1にすぎず、どう考えても大きな打撃を被るのは中国側だろう。米国にとってはもちろん、中国にとっても決してプラスにならないことは明らかだ。米中が歩み寄りを見せて早々に着地する姿勢が見えつつあり、おそらくあと数か月ほどで落ち着く方向に向かうと見られる。
何より米中の経済指標を見ても、景気後退入りを示唆するようなものはほぼ見当たらない。いま世界を覆う大きな懸念材料がクリアされてくるようだと、年末に向けて徐々に株価上昇も期待できるだろう。
【PROFILE】戸松信博(とまつ・のぶひろ):1973年生まれ。グローバルリンクアドバイザーズ代表。鋭い市場分析と自ら現地訪問を頻繁に繰り返す銘柄分析スタイルが口コミで広がり、メルマガ購読者数は3万人以上に達する。最新の注目銘柄、相場見通しなどを紹介するメルマガ「日本株通信」も展開中。