介護にも公的扶助はある
「70~74歳までの一般的な年金生活者の医療費の自己負担割合は2割で、75歳からは『後期高齢者医療制度』によって1割負担となります。“手術や入院となれば費用がかさむのでは”との心配もあるでしょうが、『高額療養費制度』を利用すれば、医療費が上限を超えた場合は、超過分が払い戻される。住民税非課税世帯の70歳以上の年金生活者の場合、医療費がいくらでも自己負担額は月額2万4600円までに抑えることができます」(ファイナンシャル・プランナーの丸山晴美氏)
介護にも様々な公的扶助がある。要介護認定を受けて介護保険サービスを利用する場合、利用者の自己負担は1割(一定以上の所得がある場合は2割、または3割)で済む。加えて、「高額医療・高額介護合算療養費制度」を利用すれば、1年間に夫婦で支払った医療費と介護費の利用者負担の合計が一定額を超えると超過分が戻ってくる。一般的な年金生活夫婦(70歳以上)なら、年間支払額の上限は56万円となる。
国民年金、厚生年金に加入中の大病なら「障害年金」が受給できる場合もある。「年金博士」として知られる社会保険労務士の北村庄吾氏が指摘する。
「手足に障害が残るようなケース以外に、抗がん剤の副作用による倦怠感やうつ病などの精神疾患でも、一定の条件を満たせば受給が認められることがある。定年後も一定の条件を満たせば65歳未満なら『障害基礎年金』が、再雇用などで厚生年金に加入中なら『障害厚生年金』を受け取れます」
定年後の医療費を抑えるにはこうした公的扶助を賢く利用する必要がある。
「これらの制度を利用するためには、自ら申請しなくてはならないケースが多い。行政や医師が教えてくれないこともあるので、利用者が自分で制度の基礎を知ることが大切です」(丸山氏)
不明な点があれば、かかりつけ医や役場に問い合わせることが肝要だ。高齢になってからの医療費や介護費が心配だからといって年金を「切り詰める」「繰り下げる」という“対策”は正しいとはいえないのだ。
※週刊ポスト2019年4月26日号