リーマン・ショック前には1バレル130ドル以上の水準だった原油価格。その後26ドルまで下落し現在は60ドル付近で推移しているが、こうした原油相場の動きは、経済にどのような影響を与えるのだろうか。FX(外国為替証拠金取引)などのカリスマ主婦トレーダーとして知られる池辺雪子さんが、原油相場の今後の見通しと為替相場との相関について解説する。
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今回は値幅の大きい原油相場についての中期的展望と、為替相場との相関について解説したいと思います。
まず原油について、中東が産出国というイメージを持っている方も少なくないと思いますが、実は世界一の輸出国は「アメリカ」というデータがあります。中東のイラクやイラン、サウジアラビア等の国々ももちろん採掘量の大きい石油国ですが、実は陰に隠れてアメリカが巨大な石油産出国だということは、覚えておいて損はないでしょう。
原油価格は2008年のリーマン・ショック前には1バレル130ドル以上ありましたが、2016年前半には26ドル付近まで下落しています。その後76ドル→42ドル→60ドルという動きで推移しています。コモディティの動きとして当たり前の論理ですが、この原油価格の動きには、需給面のパワーバランスが大きな影響を与えています。原油価格に関する需給バランスは、OPEC(石油輸出国機構)が石油の採掘量を調整することで価格を操作することができるプロダクトでもあります。
では「景気がよくなれば再度1バレル100ドルを超えるのか?」と考えたときに、私は100ドル越えの水準までは到達しないと予想します。
そのひとつの大きな理由として考えているのは、技術革新による原油需要後退です。技術革新とは何かと言うと、たとえば「電気自動車」が代表例と言えるでしょう。
先日アメリカの大手自動車会社のGMが「全ての自動車を電気自動車に変えていく」と発言しました。トランプ大統領はこれに激怒し、その話題は一旦なくなりつつある様子ですが、このような大きな動きが世界で見られると、原油の需要そのものが減退することは必須とも考えられます。長期的な需要減が恒常化すると価格が上昇しづらい相場になるのは当然であり、よって1バレル100ドルは個人的に難しいと考えています。