いじめや虐待を受けていた過去がある人が、アンダークラスに陥りやすいこともわかっている。前出・橋本さんが語る。
「アンダークラスの多くは、下層の家庭に育ち、学校教育から排除され、就職に失敗、あるいは就職しても早期に退職をしてアンダークラスに流入しています。学校では成績がふるわないことが多く、約3割がいじめに遭った経験があり、不登校の経験者も1割に達し、中退経験者も多い。暗い子供時代を送った人が多いのが特徴です。
ただし女性では比較的恵まれた家庭に育った人も少なくなく、普通に結婚して主婦になったあと、離死別を経てアンダークラスに流入する人がかなりいます。女性は多様なルートでアンダークラスに流入しているのです」
『最貧困女子』(幻冬舎新書)などの著書があるルポライター・鈴木大介さんは、男女の性差による違いを指摘する。
「女性の貧困者に触れた時に感じるのは、『なぜこんなにも被害経験の多い女性が多いのか』ということです。配偶者や交際相手からの暴力、親からの暴力、性暴力の被害、学生時代のいじめ経験、職場いじめ、さまざまなハラスメント。女性の貧困者は、さまざまな被害経験によって、もともとメンタルを痛めつけられてきているのです。
例えばDV夫から別れたら、そこからがあなたの自由な人生の再スタート、輝かしい旅立ちではないかと、ぼくはそう思っていました。しかし、殴られ脅され、それでも別れられずにギリギリ耐えた彼女らは、離婚できた時点でフルマラソンを走り終わった走者のような状況なのだと思います。そこからの回復や心に抱えた苦しさの緩和がなければ、一歩を踏み出すこともできず、結果、貧困からも抜け出せません。女性の貧困は自己責任ではなく、そこに彼女たちを追いやる『男性中心社会』の責任です」
※女性セブン2019年5月2日号