もともと正規社員で働いていた神奈川県在住の出口晴佳さん(仮名・48才)は、退職を機にアンダークラスに陥ってから抜け出せなくなった。
「都内の有名大学を出て、地方銀行に正社員として勤めていましたが、母親の介護に専念するため思い切って退職しました。でも親が早々に亡くなり、いざ再就職しようと思っても、働き先がなくて。私も48才でこれといった資格や専門性もないから、今から正社員になるのは難しくて…」
アンダークラスに落ちないために気をつけるべきことは何か。山田さんが話す。
「まずは病気にならないこと。自分だけでなく、家族が病気になった場合も、一気にアンダークラスに落ちる可能性があります。会社を辞める時もよほど慎重になるべき」
橋本さんは、誰もがアンダークラスに転落しても不思議はないと警告する。
「今、安定した職を得ている人も、年金額が意外に少ないかもしれないし、自分や家族の病気で老後のための蓄えを失うかもしれません。あるいは、自分の子供がアンダークラスに転落し、その生活を支えなければならなくなるかもしれません。中間階級からの転落は今後増えるでしょう」
アンダークラスから抜け出せるように取り組みを行っているのが、日本ロレアルだ。コーポレート・コミュニケーション本部シニア・マネージャーの船津利佐さんが話す。
「とにかく就労機会が大事だと考えていて、化粧品会社として女性の自立支援をしようと、NPO法人『しんぐるまざあず・ふぉーらむ』と連携して、シングルマザーにフォーカスをしたキャリア支援プログラム『未来への扉』という講座を開催しています。名刺の渡し方からビジネススキル、コミュニケーション、パソコンなどの共通講座があり、その後、美容部員養成コースとプロジェクトリーダー・オフィスワーク養成コースに分かれます。シングルマザーが長期的にステップアップできるよう、スキルの提供から就労支援まで行っています」