ところが、「いまではそれが経営者ばかりでなく労働者も苦しめることになっています」と橘氏は指摘する。
「祝日に全員が休めば、その分を少ない平日でこなさなければなりませんから、仕事は忙しくなります。祝日になると観光地には人が押し寄せ、平日には来なくなってしまうので、繁忙期に合わせて施設や人員を整備すると、閑散期にそれらが余剰となって収益が悪化する。それを埋めてくれるのが外国人観光客で、かつては『貧乏な国から来られても迷惑だ』などといっていたのが、いまではどの観光地も外国人観光客の誘致に血眼になっています。
祝日に休んだ分を平日で取り返さなくてはならない正社員が疲弊するのはもちろん、時給で仕事をしている非正規社員はさらに悲惨で、休みが多ければ収入が大幅に減って生活できなくなってしまいます。ところが日本では、正社員よりも『身分』の低い彼ら/彼女たちのことはどうでもいいと思われているので話題にすらなりません。こんなところにも、日本が先進国のふりをした前近代的な身分制社会であることが表われています」(同前)
今回の「10連休」もすべての仕事が休みになるわけではない。観光客を迎えるサービス業などは例年以上のフル稼働に追われるのは必至だ。多くの人が連休の前後で普段以上の仕事に追われるのも想像に難くない。その“しわよせ”は必ずどこかに生じている。