厚生年金の保険料は2004年から14年間にわたって毎年引き上げられ、2017年9月には政府が「上限」とした給料の18.3%(労使合計)に達した。負担増を決めた当時の小泉政権は、これ以上保険料は上がることのない“100年安心”の年金制度だと大見得を切った。
だが、元号が令和になると、平成時代の約束を反故にして保険料増額が検討されはじめる。働く高齢者の厚生年金加入年齢を70歳以上に引き上げる方針なのだ。
現在は70歳になれば保険料は払わなくていい。つまり、この改悪は「働く限り保険料を払わせる」制度といえる。定年後の月給が30万円の場合、加入期間が70歳から75歳へと5年間長くなれば天引きされる保険料総額は約165万円増える。事実上の保険料値上げだ。
もちろん、加入期間が長くなれば受け取る年金額は増えるが、“超”長期加入の場合は保険料の「払い損」が生まれることになる。
「厚生年金保険料には基礎年金(国民年金)と報酬比例部分の保険料が含まれています。20歳から働き始めたサラリーマンが75歳まで55年間、厚生年金に加入すると報酬比例部分の年金額は増えます。ただし、基礎年金は40年加入で満額になり、それ以上は増えない。55年間保険料を払っても、15年分の保険料には基礎年金の金額に反映されない払い損が生じるわけです」(ベテラン社労士)
取られるけどもらえない
その国民年金も加入期間を最長40年間から45年間に延長する計画がある。
これまでより保険料を5年間(約98万円)多く支払うことで受給額を約6万5000円から約7万1500円へと1割アップさせるものだ。5年前の財政検証で導入が検討されたが、「国の負担が増える」という理由で見送られた経緯がある。
それが今回の財政検証で再浮上する可能性がある。理由はわかりやすい。